親子旅行記

3歳の娘、妻、私の旅行記を主に書いてます

西加奈子のサラバ!は子どもとの関わり方についても参考になる

西加奈子サラバ!を読んだ。上、中、下の3巻で約1000ページである。ボリュームがあり、なかなか手が出せなかったが、本屋でも中心に置かれる程人気のある小説で、気になったので読んでみた。

 

○  あらすじ

物語は生まれた瞬間から始まる。生まれた場所はイラン。その後は日本に帰り幼稚園、小学校と過ごすが、父親の海外赴任で再び異国の地、エジプトで過ごすことになる。幼少期から周りとは異なる環境で過ごすが、目立ち過ぎずいかに溶け込むか処世術を身に着け、順風満帆といえる生活を送る主人公・歩。それとは対照的に、姉・貴子は周りの注目を浴びることを好み、人と違うことをし、母もお手上げ。学校でも浮いてしまい、学校に行かなくなり、救いを求めて宗教にすがってしまう。

 

以下はネタばれ注意。

 

 ○  感想

物語としては中巻から下巻にかけての歩と貴子の人生の逆転劇が面白いが、上巻を中心に、子どもとの関わり方についてのエピソードが語られていて、親目線で読むと色々と参考になるところがある。

 

姉の貴子のような子どもがいたら本当に大変だろうが、幼稚園時代に貴子と同じように暴れ回り手のつけられない「たはらえいじ」という園児が出てくる。「たはらえいじ」の母は周りにペコペコ頭を下げるのに対し、貴子の母は決して頭を下げない。むしろ怒っている。日本の父母の大半が「たはらえいじ」の母のような態度を取るだろうし、私も同じである。

この点では、自分の子育てのやり方が間違っていないと信じることは重要である。しかし、それが自分自身を苦しめることになってしまい、子どもも苦しめてしまう。貴子の母の方針が間違っているとは必ずしも言い切れず、そのときは何もかもが必死だったのだろう。結局、貴子が大人になって母と分かり合えたが、親も子どもと一緒に成長するのである。

 

また、兄弟がいる場合の子育てにも役立ちそうである。手のかかる子の方に目が行きがちであるため、手のかからない子にとっては寂しい思いをしてるのではないだろうか。

歩は姉のような態度は損であり、素直ないい子でいればいただけ、母や周囲の大人たちは愛情を注いでくれるという空気の読める子どもになった。姉のようにはなりたくない、いかに目立たないように周りに溶け込むかをモットーに人格形成がされていくが、周りからは自分の意見がないと言われ、ちょっとしたことがきっかけで自信を失くしてしまう。

下の子は上の子を見て育つというので、兄弟で全く性格が異なる場合で、下の子が一見素直でいい子な場合はよく気にかけた方がいいのだろう。

 

色々と書いてみたが、人物描写が巧妙で面白く、是非読んでほしい作品である。