親子旅行記

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【感想】「AI VS.教科書が読めない子どもたち」は子どもにどのような能力を伸ばしたらよいか参考になる

「AI VS.教科書が読めない子どもたち」。結構衝撃的なタイトルで目を引いたので、読んでみた。色々と参考になることが多かったので、感想を書く。

 

〇 あらすじ

世間ではAIの議論が賑わっているが、AIは人間に取って代わることはない。「東ロボくん」という人工知能が東大合格を目指してチャレンジをしているが、既にMARCHレベルの合格水準に達してるという。

しかし、文の構造を理解した上で、生活体験や常識、様々な知識を総動員して文章を理解する力(推論)、文章と図形やグラフを比べて、内容が一致しているかどうかを認識する能力(イメージ同定)、定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力である(具体的同定)は、文章の意味を理解しないAIでは全く歯が立たないという。

ただ、これで将来AIによって仕事を奪われることがないと安心することはできない。中高生が上記の能力を持っていなく、教科書を読めないという。むしろ、暗記では対応できるが、これはAIも得意とする分野であり、AIにはかなわない。AIにできない分野の能力、つまり読解力をつけることが鍵を握る。

 

〇 感想

まずこの本を読んで、読解力の重要性はもっと早く、私が中高生の時に知っていたらと思った。確かにテストでは暗記すればそこそこ点は取れるが、試験問題となるとうまくいかなかったりして、なぜだろうと思うことはあった。文章を正しく読むということは重要だったのである。しかも、読解力は早い段階で差がつくらしく、超難関私立中学に入学できる子は、入ってからの授業で読解力が築き上げられるのではなく、既に読解力を持っているため入試をパスできたということには頷ける。また、現在でも、教科書を中心とした一方的な授業ではなく、討論を授業に取り入れて、国際的に活躍できる人材を育てるとか目標にされているようが、そもそも教科書を読むことができる読解力がないと議論も深まらないのであろう。

 

本にはどのような問題が中高生たちに分からなかったのか、例や学年別の正答率が示されており、本当にこんな問題が分からないのかとか、これは引っ掛かりそうだなと、楽しみながら読むことができる。どれも意味を考えながら読み飛ばすことなく丁寧に読めば正解に辿り着ける。過去との比較がないため、今はメールやLINEで主語もない短い文章でやり取りできるために読解力が低下したのかは分からないが、一因であるようには考えられる。社会に出てからも仕事で文章を読む機会はあるし、将来AIが発達したとしても人間が文章を読むことはおそらくなくならないと思うので、読解力の重要性は実感できる。

 

著者はAIについて特段賞賛したり、批判したり偏った記述もなく、特徴や限界について分かりやすく書かれており、将来仕事を奪われないようにするためにどのような能力が必要なのか数学者の観点から書かれているところはとても興味深く読むことができた。ただ、将来生まれる仕事として、人間が不自由に感じている部分を解決する仕事が例に挙げられているが、これいについてはAIができない分野としては確かであるが、論旨である読解力と直接関係なく蛇足であるように思った。

 

ただ、今後子どもにどのような能力を伸ばしていったらよいかを考える上でとても参考となるおすすめの本であるので、是非読んでもらいたい。

 

〇 AI VS.教科書が読めない子どもたち

著者:新井紀子(あらいのりこ)

発行所:東洋経済新報社

発行年月:2018年2月